「S級審判インストラクターと見るFIFAクラブワールドカップ」担当レフェリーインストラクター:太田潔氏インタビュー(08.11.21)

 JFAコミュニティでは昨年に引き続き「S級審判インストラクターと見るFIFA クラブワールドカップ」を今年も実施します。担当するレフェリーインストラクターはJFAレフェリーカレッジマスターとして活躍する太田潔氏。インタビューでは、観戦するポイントや研修に参加する皆さんへの期待をお話しいただきました。(取材:2008年11月18日)
――まず初めに、FIFAクラブワールドカップにはどのような印象をお持ちですか?

太田:「ワールドカップは国同士の戦いですが、クラブワールドカップでは例えばブラジル人選手が別のチームとして戦うなど、同じ国の選手でも対戦する機会があることが非常に面白いと思います。また、日本でもクラブチームが地域に根差してきましたが、海外クラブの地元での思い入れというものは比較にならないくらい強いですよね。今回ガンバ大阪(以下、G大阪)が出場する事で、同じように地元が後押しできるのか、どれほどの盛り上がりを見せるのかという部分も注目しています。G大阪が一回勝てばあのマンチェスター・ユナイテッドと対戦することになるわけですから、ぜひその試合が見られるように頑張って欲しいですね。レフェリーについて言えば、ワールドカップの候補とされているメンバーが集まるので、南米とヨーロッパなど国によっての特徴の違いなどを比べながら見てみたいと思います」
――2年前のワールドカップ ドイツ大会から示されるようになった「競技者の安全が脅かされることなくスピーディーで魅力あるサッカーが展開され、ゲームが進むことを目指したレフェリングのターゲット」とは具体的にはどういったことでしょうか?

太田:「競技者の安全を守るという面で言うと、足の裏を見せたタックル、そして肘や腕を使ったプレーに対してさらに厳しく判定するようになりました。以前からそのようなプレーはファウルでしたし、著しいものはレッドカードとなっていましたが、より厳しくなってきています。日本国内では少ないのですが、海外ではゲームが激しくなった時、ボールと関係ない足をめがけたタックルを行うプレーも見受けられます。FIFAはそのようなプレーをなくそうとしていますし、それは非常に危険なので統一した判定基準のもとでプレーさせたいということだと思います。また、スピーディーな展開という部分では、Jリーグはなるべく早くプレーを再開させるようにしていて、それが日本の良さを出すことにつながり、そうしたサッカーを目指しています。しかし、世界的に見るとそうした部分は緩やかな面も見られます。たとえばフリーキックの時に相手選手が邪魔をしても、それも含めてサッカーだからという認識があるのか、やられた方も、やった方も、レフェリーもわかっていて丸く収まるといったシーンもあります。けれども、そういったプレーを遅らせる行為については、FIFAは審判員に的確な対応を求めています」
――今回の観戦企画では、どのような点に注目して観戦すると良いでしょうか?

太田:「FIFAはワールドカップに向けてクラブワールドカップや昨年のU-17、U-20のワールドカップでもスタンダードを示しています。ですから、そこまで大きな判定の違いはないと思いますが、やはりレフェリーによって特色があるので、そこを比べてみるのが面白いと思います。私としてはヨーロッパの審判員は選手への対応が大らか・フレンドリーといった印象で、南米の方は細かい部分まで厳しいといったイメージがあります。おそらく、それを許してしまうと南米では笛を吹けないのかもしれません。審判インストラクターの方は、このレベルの大会に出てくるレフェリーであっても、どうしても間違いや見落としがあるので、それを見て、なぜそれが起きたのかという観点をもてると良いと思います」
◆試合中に僕の方からも話をしたいと思いますし、見ている皆さんともいろんな意見の交換ができるようにしたい

――参加者の皆さんとはどのように観戦しようとお考えですか?

太田:「やはり、現場で話をしながら見ることができるのが一番ですよね。ファウルが起きた、またはファウルを見逃したといった場面があれば、その場でディスカッションできることがいい。今年の北京オリンピックでも同じように試合を観戦しながら研修を行いましたが、一つのプレーに対しても「これは良かった」、「いや、あれは間違いじゃないか」と色々な意見が出ました。今回も同じ審判の仲間と、そうした意見の交流ができるようにしたいと思います。また、2級の方なら、ある程度のレベルで審判員を務めていると思うので、自分とオーバーラップできる部分、自分が実践することを想定しながら、具体的に見ることもできると思います。それと、どうしても研修ということで少し構えて考えている方がいらっしゃるかもしれませんが、まずは日本で行われるクラブワールドカップの雰囲気を味わって欲しいですね。せっかくの国際大会なのでもっと楽しんでいいと思います。普段、日本国内で行われている研修会のように細かくやることももちろん必要ですが、今回は固い雰囲気で90分間試合を見るよりも、試合中に僕の方からも話をしたいと思いますし、見ている皆さんともいろんな意見の交換ができるようにしたいです。よく観客席にも「今のプレーはどうだったな」といった解説者みたいなお父さんがいますよね。あのノリに近いかもしれません(笑)。そういった形で試合を見ても、レフェリーの良かった点、気になる点というものも当然出てくると思います。それを自分に当てはめた時に必ずしも通用するとは限らないわけですが、良い部分・悪い部分を自分の中で咀嚼してもらって、それを今後に活かして欲しいと思います」
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